2007.06.17

極上ティールーム:サロン・ド・テ・アルション法善寺本店

大阪出張の夜、金竜ラーメンとたくさんのたこ焼きをたべていたく満足し、上六の都ホテルに戻ろうと道頓堀の人ごみを避けて一本わき道に入った。新宿の三越裏のような微妙に人通りがない通りの真ん中に赤いケーキ屋さんを見つけてそれがかわいいとのぞいてみると、どうやら2Fにティールームがありディナーまたはお茶ができるものだそうだ。

ちょうど二席だけあけられるとのことで席の都合をつけてもらい、狭くてぎしぎしという階段で2Fにあがるとアンティークなインテリアに満席の30〜50代女性たち。男性は私を含めて二人。この客層と混雑具合でこのお店は当たりだという確信を得た。

この時点でほぼラストオーダーの時間。スフレを頼みたかったのだがこれは21時までの提供ということであきらめて、バナナのミルフィーユと、スコーン、アイスティにティーパンチ。ここで特筆すべきはミルフィーユ。焼きたてのぱりぱりのパイをスプーンでずぶりとつぶしこみソースとからめバナナを乗せて、基本さくさく外側だけしっとりのパイと柔らかいバナナの感触を同時に楽しむのだ。

そして二度目の訪問は今日。どうしてもスフレを食べたいということで、南禅寺の湯豆腐の帰りに再度なんばに降り、そのまままっすぐサロン・ド・テ・アルション法善寺本店の2Fへ。

19:00。腰を低くおろしてわれわれの注文をきく若いウエイターに勢いよくスフレを注文すると軽い大阪のアクセントで「大変申し訳ございません、今日はお昼にスフレがたくさん出てしまいまして、本日はもう生地が終わってしまいました。」といわれてしまい、落胆の色を隠せず。がっくり。

アールグレイとセイロン風ミルクティ、モンブラン、こげシューを注文。残念がっても仕方がない、明日の朝また来るかとふたり心に決めたそのとき、若いウエイターがふわりと戻ってきて私の右斜め後ろ45度に腰を低くして話しかけてきた。

「お客様、もし生地からおつくりするのに45分お待ちいただけるのでしたら、ぜひスフレを召し上がっていただけませんでしょうか。」

おおおおお、わざわざ生地から作ってくれるのか!といたく感動したわれわれはもちろん45分程度の待ち時間などは気にしない。申し出をありがたく受けて、待つあいだにまずはこげシューを味わった。こげシューはさくっとした生地に、ナイフで切った断面が崩れないほどしっとりと詰まったカスタードのバランスが大変よく、生地の外側に散らした大き目のアーモンドが気の利いたアクセント。

20分程度でモンブランも食べつくし、お茶を飲んでいると再度若いウエイターが右斜め45度からお連れ様の目の前にお皿を置いた。その上にはシャーベットとフルーツヨーグルトが層状になった小さいカクテルグラスが置いてある。「お時間をお取りして申し訳ございません。こちらをお召し上がりお待ちください。」むさい私ではなくお連れ様の女性の前に置くところが女性客の心をつかむのだろうか。

「スフレは時間が命なので、ご注文いただいたらお手洗いはたたずにお待ちください」と書いたスフレの食べ方マニュアルを精読していると、若いウエイターの手によりスフレが風のように到着した。

そう、スフレは時間が命。スプーンを瞬時にとり、まずは真ん中のふわふわにスプーンをつきたててぐっと差し込み、ふわふわほこほこしたスフレをすくいとる。そのまま口に入れるとタマゴ多めのカスタードのようなあつあつぷるんが舌の上で踊り、そのまま溶けていく。次はベリーソースをかけて食す。フルーツを入れて食す。まんなかの一番おいしいところがなくなるのに1分はかからず、周囲に手をつけ始めて食べ終わったのはその1分後。そのままが一番おいしかったがこれは最初の一番おいしいときに食べたからだろうか。

すばらしい仕事、そしてすばらしいサービスを堪能したわれわれは、大きくなったお腹をかかえてタクシーとともに夜の街に消えていった。

ひょっとしたらこの若いウエイターはわれわれがどこか遠方からきているということを敏感に感じ取ったので、わざわざ生地から作ると言ってくれたのではないか。とにかく気配りの利く彼だった。

日本の若い男子がみんな彼のようだったらいいのに。

評価
★★★★★

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